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悪魔についてマンガを描いたり語ったり。書籍を紹介したりします。
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『アーリマン』を描く原動力になった本

まず始めにこの本について語らねばなるまいと思っていましたが…。
熱がこもりすぎて長くなりそうなのでまずはアスモの話をしてしまいました。

『失楽園』は17世紀、イギリスの詩人ジョン・ミルトン先生が書いた叙事詩です。
旧約聖書の「創世記」つまりアダムとイブが禁断の実を口にし、
エデンの園を去るまでが描かれています。

そんな話なのに何故かミルトン先生は

サタン=ルシファーを主役に描いた

キリスト教最大の悪役なのにです。最後もちろんコテンパンにやられるのにです。
それなのに少年マンガの主人公よろしく、非常に魅力的なサタンが描かれています。

始まりのシーンはサタンが天界の戦争に破れ、地獄に堕ちた所から始まります。
自分と同じく地獄に堕ちた仲間達を、一番親身な部下のベルゼブブを起こし、
絶望にうなだれる仲間達を鼓舞するシーン。

「一敗地に塗れたからといって、それがどうしたというのだ?全てが失われたわけではない。」

いやもう失われまくってるよ??!
冒頭のシーンだけど、普通はこれでエンディングだよ?
最終話付近で「まだだ!まだ終らんよ!」って叫んでる君はなんだ

シャア・アズナブルか!

もう出だしから気持ち鷲掴みです。

その後、部下達に希望を持たせるため、サタンは一人で地獄を突破、
地獄から抜け出す時の障害を避けながら翼で滑空する様はまさしくヒーロー、
作中で彗星と例えられる程ほれぼれするアクションシーン…。

やっぱシャアだった

そんなちょっとシャアっぽいサタンがエデンに潜入し、
天使に捕らえられたり欺いたり、時には独りで孤独に葛藤したりしながら、
イブに禁断の実を食べさせ、人類に原罪を植え付けるのですが、
ダメな所から大活躍のシーンまでどれもこれも魅力的。

でもきちんとキリスト教の世界観は守られ、主の偉大さも感じられる

いくら魅力的でもサタンはきちんと悪役に書かれているし、
サタンの宿敵ミカエルも大天使らしく毅然としている。
天使の理念や主の思惑、原罪から救罪までもどういう概念かわかりやすく書かれているので、
『失楽園』を読んだおかげでイエスが磔刑にかからねばならない理屈をようやく理解できました。

『失楽園』はミルトン先生の創作ではあるのですが、とてもよく書かれているので
元ネタのはずのキリスト教に、逆に影響を及ぼしました。
天使や悪魔関連の本には引用として、よく『失楽園』が登場します。

聖書が公式なら『失楽園』は準公式

そのくらい言っても過言ではないと思うくらい、特に悪魔学には重要な作品です。
聖書には全然ルシファー出て来ませんからね…!
もともとサタン(ルシファー)が好きで調べてはいたのですが、
『失楽園』を読んでからその魅力的なサタンに萌えが止まらず、
「アーリマン」を描き始める事になったのでした。

叙事詩なのでサタンが長ゼリフ過ぎて時々うんざりしますが読んで頂きたい!

悪魔が好きなら特に読んで頂きたい!
そんな作品です。

ちなみに、オススメはこちらの岩波書店の上下巻です。
少々文が難しく読みにくさはあるのですが、訳者の方は英文学者でミルトン先生の研究もされており、注釈で書かれた時代の世相や、ミルトン先生の思惑なんかも解説されているので
合わせて読むとなるほどと思う事もあり、より深く楽しめます。

英語が読めない私でもこんなに楽しめるなんて本当ありがたいです。
日本に生まれたけど読めて良かった…!

ルシファーが気になる/好きな人はぜひ一度読んでくれ!!

本当これ映画とかマンガとかメディア展開してほしい、立派な少年マンガです。
オファーがあるなら私が描きたいくらいだ。


たたんだ先に下巻のリンクも貼っておきます。
上巻は神に反旗を翻すサタンの天界戦争からエデン潜入作戦までカッコイイ所盛りだくさん
なのですが、下巻は負け戦なので少々失速します。
そのかわり、巻末にはイケメンミカエルが出て来ますので、天使好きさんにもオススメです。


『アーリマン』を描く動機の一つに、東と西の端と端で頑張っている魔王、サタンとマーラを仲良くさせたい、というのがありました。
いきなり出会っても良いけど(コミックス版ではそうでしたが)どうせならなにか接点が欲しい。
端と端で暮らす2柱に接点がないか調べた所、カギとなりそうな人物が一柱…それがアスモデウスでした。

以前説明したように、アスモデウスはゾロアスター教のオリジナル悪魔です。
そしてゾロアスター教にはアスモデウス=アエーシュマのようなオリジナル悪魔の他に、インドの神々を悪魔化したダエーワがいます。
つまり…アスモデウスはダエーワ=天部と面識があるはず。
そしてマーラは仏教に取り入れられて天魔となった魔王、所属は天部です。

つながった!!西洋の悪魔と東洋の悪魔がつながったぞー!

とはいえ、アスモデウスが天部に所属というのは少し無理がある…なにか仲介役が欲しい。
と言う事で、ダエーワの中の七大魔王の名前に目を通すと、知った名前があるじゃないですか。

魔王インドラ

インドの神インドラ、日本人的には帝釈天の名前がしっくりきます。
帝釈天と言えば今でも信仰を集める由緒正しき仏様
それが魔王というのも不思議な話です。

ですが、彼の神話をあらためて調べると、結構ぶっ飛んでいるエピソードが多い。
人妻と浮気をして千の女陰を体中に付けられる呪いを受けた…とか。
阿修羅の娘を誘拐し犯してしまったために阿修羅と大戦争に突入したとか。
(この時の帝釈天と阿修羅の戦いが修羅場の語源になります。まさに修羅場。)
のちに誘拐された阿修羅の娘は正式に帝釈天の妻となり、それでも我を忘れて怒り続ける義父・阿修羅が悪とされるのですが…。

それは帝釈天が悪いんじゃないかな

帝釈天が、阿修羅=アフラ・マズダーからは魔王と呼ばれるのも当然なのかもしれない。

仏教に取り入れられてからは温厚で慈悲深い神とされる帝釈天。
昔はヤンチャだったというのも面白いお話です。
また、神酒ソーマが大好きで戦いの前には酒をあおり勢いを付けたと言われ、かなり豪快。

なんとなく、ゾロアスター教時代は酒の酔いと暴力の魔神と言われ恐れられていたけれども、
キ教に取り入れられて大人しくなってしまったアスモデウスと相性が良い気がしてきます。
と、言う事で『アーリマン』ではこの2柱に接点を持たせる事にしました。

また、帝釈天の乗る聖獣の象アイラーヴァタは、マーラの乗る魔獣の象ギリメカラの前身。
アイラーヴァタがスリランカで悪魔化した姿がギリメカラと言われています。
帝釈天だったらマーラとも接点が持てる、そう思い仲介役として登場させました。


今は温厚な帝釈天ですが、若い頃(?)は酒を飲み、喧嘩に明け暮れ、女遊びをしていたと想像するとなんとも人間味のある神様に思えて来ます。
アスモデウスと悪友となり、ペルシアで魔王と呼ばれ、ブイブイ言わせている帝釈天もそれはそれで魅力的だな…と思うわけです。


余談ですが、アエーシュマに相当する語は"アスモ"の部分で、残りの"デウス"は"デーヴァ(天部)"の意味だそうです。
まさか遠い国の悪魔であるアスモデウスが日本でもなじみ深い天部と関係があるとは思いませんでしたが、これだけ顔の広い彼なら東西の魔王をまとめられると思い、バンドメンバーに加わる事になったのでした。
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プロフィール
HN:江口 カイム
職業:マンガ家
趣味:ライブに行く
[自己紹介]
悪魔とロックが好きな
黒服系マンガ家
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