『アーリマン』を描く動機の一つに、東と西の端と端で頑張っている魔王、サタンとマーラを仲良くさせたい、というのがありました。
いきなり出会っても良いけど(コミックス版ではそうでしたが)どうせならなにか接点が欲しい。
端と端で暮らす2柱に接点がないか調べた所、カギとなりそうな人物が一柱…それがアスモデウスでした。
以前説明したように、アスモデウスはゾロアスター教のオリジナル悪魔です。
そしてゾロアスター教にはアスモデウス=アエーシュマのようなオリジナル悪魔の他に、インドの神々を悪魔化したダエーワがいます。
つまり…アスモデウスはダエーワ=天部と面識があるはず。
そしてマーラは仏教に取り入れられて天魔となった魔王、所属は天部です。
つながった!!西洋の悪魔と東洋の悪魔がつながったぞー!
とはいえ、アスモデウスが天部に所属というのは少し無理がある…なにか仲介役が欲しい。
と言う事で、ダエーワの中の七大魔王の名前に目を通すと、知った名前があるじゃないですか。
魔王インドラ
インドの神インドラ、日本人的には帝釈天の名前がしっくりきます。
帝釈天と言えば今でも信仰を集める由緒正しき仏様
それが魔王というのも不思議な話です。
ですが、彼の神話をあらためて調べると、結構ぶっ飛んでいるエピソードが多い。
人妻と浮気をして千の女陰を体中に付けられる呪いを受けた…とか。
阿修羅の娘を誘拐し犯してしまったために阿修羅と大戦争に突入したとか。
(この時の帝釈天と阿修羅の戦いが修羅場の語源になります。まさに修羅場。)
のちに誘拐された阿修羅の娘は正式に帝釈天の妻となり、それでも我を忘れて怒り続ける義父・阿修羅が悪とされるのですが…。
それは帝釈天が悪いんじゃないかな
帝釈天が、阿修羅=アフラ・マズダーからは魔王と呼ばれるのも当然なのかもしれない。
仏教に取り入れられてからは温厚で慈悲深い神とされる帝釈天。
昔はヤンチャだったというのも面白いお話です。
また、神酒ソーマが大好きで戦いの前には酒をあおり勢いを付けたと言われ、かなり豪快。
なんとなく、ゾロアスター教時代は酒の酔いと暴力の魔神と言われ恐れられていたけれども、
キ教に取り入れられて大人しくなってしまったアスモデウスと相性が良い気がしてきます。
と、言う事で『アーリマン』ではこの2柱に接点を持たせる事にしました。
また、帝釈天の乗る聖獣の象アイラーヴァタは、マーラの乗る魔獣の象ギリメカラの前身。
アイラーヴァタがスリランカで悪魔化した姿がギリメカラと言われています。
帝釈天だったらマーラとも接点が持てる、そう思い仲介役として登場させました。
今は温厚な帝釈天ですが、若い頃(?)は酒を飲み、喧嘩に明け暮れ、女遊びをしていたと想像するとなんとも人間味のある神様に思えて来ます。
アスモデウスと悪友となり、ペルシアで魔王と呼ばれ、ブイブイ言わせている帝釈天もそれはそれで魅力的だな…と思うわけです。
余談ですが、アエーシュマに相当する語は"アスモ"の部分で、残りの"デウス"は"デーヴァ(天部)"の意味だそうです。
まさか遠い国の悪魔であるアスモデウスが日本でもなじみ深い天部と関係があるとは思いませんでしたが、これだけ顔の広い彼なら東西の魔王をまとめられると思い、バンドメンバーに加わる事になったのでした。
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